顧客価値とは?顧客価値を高めるための方法を詳しく紹介
2022.06.24
顧客価値はビジネスにとって不可欠な概念で、製品・サービスが事業として成長するかどうかは顧客価値に委ねられているといっても過言ではありません。では、そんな顧客価値とはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、ビジネスの根幹をなす顧客価値について解説していきます。顧客価値とは何か、計算方法から提供するポイントまで、詳しく見ていきましょう。
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顧客価値(Customer Value)とは
顧客価値(Customer Value)とは、顧客が製品・サービスを購入することで実感できる価値のことです。顧客が金銭を払って購入・契約するものには全て何かしらの価値が存在しており、顧客は価値の対価としてお金を支払います。その価値には機能的に得られる価値もあれば、情緒的に得られる価値、体験として得られる価値もあります。
注意しなければいけないのは、製品・サービスを提供している企業や従業員が自社製品・サービスの価値として捉えているもの全てが顧客価値とは限らないという点です。顧客価値はあくまで顧客の視点から価値として実感できるものを指しているのですが、提供側が「これがうちの価値だ」と思っているものとはズレが生じている場合があるため、注意しましょう。
このように、企業が提供している価値と顧客が実感する価値には若干の乖離が発生することもあり、この2つが重なる部分をバリュープロポジションと呼びます。提供価値と顧客価値が重なるバリュープロポジションを最大化することが、ビジネスの成長には不可欠といえるでしょう。
このバリューポジションを最大化するために注目されているのが、顧客価値(Customer Value)がその一端を担う4Cと呼ばれる概念です。4Cとは
マーケティングにおける4Cという言葉をご存じでしょうか。4Cとは、アメリカの経済学者ロバート・ラウターボーン氏により定義された概念です。
4Cが誕生する以前は4P呼ばれる「Product」「Price」「Place」「Promotion」がマーケティングを構成する4要素と捉えられていたのですが、現在はこの4Pは事業者側視点から見たマーケティングの4要素と呼ばれており、対となる顧客視点から見たマーケティングの4要素が4Cとなっています。
マーケティングのパフォーマンスを高めるために、顧客視点で企業が注力すべきポイントが4Cであり、その1つがCustomer Valueすなわち顧客価値なのです。4PのProductと対をなしており、製品を顧客視点で捉える必要があります。
では、残りの3つについて見ていきましょう。Cost
まず1つがCost(費用)です。いくら価値のある製品であっても、適切な価格が設定されていないと顧客に選ばれる製品にはなりません。
4PにおけるPriceと対をなす概念で、事業者視点で適切なPrice(価格)を設定する必要があると同時に、顧客視点で得られる価値の対価として適切なCost(費用)に設定しなければいけません。Convenience
次がConveniece(利便性)です。こちらはPlace(流通)と対をなす概念で、製品が顧客に届きわたるためには、適切な流通経路を確保する必要があるということを表しています。価値があって適切な価格が設定されていたとしても、滅多に手に入らないものであったり、手に入れるためにかなり苦労するものであれば顧客に選んでもらうのは厳しくなるでしょう。
Communication
最後がCommunication(コミュニケーション)です。Promotion(販促)と対をなす概念で、製品・サービスを顧客に認知してもらい、興味を持ってもらうためには適切なコミュニケーションが必要である、ということを指しています。
顧客価値がマーケティングで重要とされる理由
では、なぜ顧客価値がマーケティングで重要とされているのでしょうか。ここでは、その理由を詳しく紹介していきます。
他社にはない顧客価値を生み出せる
顧客価値を明確にすることで、他者との差別化ポイントを把握できます。製品・サービスが顧客に選ばれるためには、製品が提供している価値と顧客が実感する価値が交差するバリュープロポジションが重要であると説明しました。
しかし、バリュープロポジションを構成するのは実はこの2要素だけではなく、もう1つ「競合が提供する価値」というものもあるのです。というのも、いくら製品の提供価値と顧客価値が上手く交わっていて、適切なCost/Convenience/Communicationでマーケティングが設計されていたとしても、同様の価値を競合他社も提供していて、競合のほうが優れた要素があった場合、当然顧客はあなたの企業の製品・サービスを選んでくれなくなります。
正確には、バリュープロポジションは製品の提供価値と顧客価値が交わる部分のうち、競合他社が提供していない価値のことを指します。このバリュープロポジションを最大化していくことが、ビジネスを行う上で非常に重要な観点です。
そして、バリュープロポジションを最大化するためには、そもそも現在の顧客価値とは何なのか、競合が提供している顧客価値と自社が提供している顧客価値にはどのような違いがあるのかを明確化することが重要になります。それによって、プロモーションの方向性を考えることができたり、今後の機能開発でさらに差別化を行ったりすることが可能になるのです。顧客に対してさまざまな体験を与えられる
製品・サービスを顧客視点で捉えず、何が顧客価値なのかも分からないまま製品を開発していくのは非常に危険です。
なぜなら、製品・サービスの開発者はその道のプロフェッショナルであり、その道を極めれば極めるほど顧客から遠い存在になっていってしまいます。事業者視点と顧客視点は乖離していくのが常なので、顧客視点を持って製品開発をしなければ顧客に選ばれ続ける製品・サービスを提供できません。
逆にいうと、顧客視点で製品・サービスを客観視し、顧客価値が何なのかを捉えることによって、今後どういった付加価値が必要なのかも明確にできます。現状の顧客価値を捉えることが、今後顧客に対してさまざまな体験・価値を提供できる第一歩となるのです。顧客価値には4つの段階がある
顧客価値には、下記の4つの段階があるといわれています。
- 基本価値
- 期待価値
- 願望価値
- 予想外価値
こちらは上のものほど不可欠な価値であり、下にいくほど顧客の想像を超える価値となっていきます。
基本価値は、顧客が製品・サービスに最低限求める価値のことです。提供されていないと製品・サービスとしての体をなしていないレベルのものを指し、この価値が十分に提供されないとクレームにつながりやすいといえます。
期待価値はその一歩上の価値で、顧客としてはその製品・サービスに当然期待しているものを指します。これが満たされないとクレームまではいかないものの、リピートにはつながらず、1回限りの顧客となってしまうことが大半です。
願望価値は期待よりも一歩上の概念を意味します。期待を上回る価値のことで、当然のこととして求めるレベルを超えて望ましいです。予想外価値はさらにその上で、顧客が想像しうる価値をさらに超えて顧客に良い意味の驚きを与える価値を指します。
レストランを例に考えてみましょう。
レストランに行く場合、大抵の人がそこで食事をすることを目的としています。そのため食事が提供されるのがレストランの基本価値であり、レストランとして看板を出して営業をしている以上、「中に入ってみたら食事を提供していないお店だった」となるとクレームにつながる可能性が高いでしょう。
次に、そのレストランで1,000円の食事を注文したとします。そうすると顧客はこれまでの経験や相場から、1,000円を食事に支払った際に妥当な食事の量や味の基準を何となく持っているはずです。
これが期待価値となっていて、これを下回って「思ったより少なかった」「思ったより美味しくなかった」と思われてしまうと、わざわざ店にクレームをいうほどではなくても、また同じ店に行くことはなくなるでしょう。
一方で、1,000円払ってこのレベルの食事だったら「嬉しい」「何度も通いたくなる」という基準が、願望価値です。願望価値を超えると顧客はリピーターとなる確率が上がります。
さらに、顧客の期待を良い意味で裏切り、1,000円では想像もしていなかったレベルの量や味の食事が来ると、顧客は最大級の満足として予想外価値を感じるのです。予想外価値を感じると顧客はファンになる可能性が高まります。
このように価値には4段階存在し、上のものほど満たされて当然の価値、下にいくほどユーザーがリピーター・ファン化しやすい価値となっています。顧客価値の計算方法
次に、顧客価値を構成する要素を紹介していくので、見ていきましょう。顧客価値を式にすると、以下のような形になります。
顧客価値 =(顧客が製品・サービスを通して受け取る価値)-(顧客が支払うコスト)× 全プロダクト
顧客価値は、支払うコストが上がるほど求めるものも高くなります。そのため受け取る価値からコストを差し引いたものが最終的に得られる顧客価値となるのです。
企業によっては複数のプロダクトを展開していて、それらがかけ合わさって1つの価値を生んでいるケースもあります。そういった場合は、顧客の最終的な価値を判断するためには、全プロダクト横断で価値を測ると良いでしょう。顧客価値を提供するポイント
顧客価値を提供するためには、顧客の解像度を徹底的に高めることが必要不可欠です。先ほども解説した通り、事業提供者は事業の提供を続けると顧客と視点がズレていくことが多い傾向にあります。
そのため、定期的に顧客と接し、顧客が何に悩み何に喜びを感じているのかを肌で感じ取ったり、顧客視点で製品やサービスを見てどのように映っているのかをヒアリングすると良いでしょう。
顧客視点を手に入れないと、顧客価値を正確に把握できません。顧客視点を手に入れるためには、顧客との対話が重要です。顧客価値を高めるには?
顧客価値を高める方法はいくつかありますが、ここでは2つほど紹介します。顧客価値を高めたいという人は、参考にしてみてください。
コンセプトに合わせて施策を検討する
まず、製品やサービスのコンセプトに合わせて提供する価値を統一させていくことが必要です。そうしないと価値が分散してしまい、1人の顧客が感じる価値が小さくなってしまいます。場合によっては価値が分散した結果、お互いに価値を毀損しあうことにもなりかねません。
例えば、ファミリーレストランは主にファミリー層をターゲットとしたレストランで、老若男女が好む料理、ゆっくりくつろげる座席、リーズナブルな価格帯などが家族に選ばれている要因だと思います。
ここでコンセプトを外れて独身の高年男性を獲得しようと価値を分散させると、喫煙席が増えたり、高価格なお酒やお酒に合うメニューが増えたりなど、ファミリー層にとってマイナスとなる施策になってしまい、結果として当初のコンセプトであったファミリーレストランではなくなってしまうのです。
顧客価値を高めるためにはコンセプトを明確にし、そのコンセプトに沿って価値を分散させないよう相乗効果を狙っていく必要があります。顕在ニーズだけでなく潜在ニーズも把握する
先ほど顧客価値を提供するポイントで、顧客視点を手に入れると紹介しましたが、顧客が自身が持つニーズの全てを言語化できるわけではありません。
例えば、「今の家に不満はありますか?」と聞かれて「特にありません」という人は多いと思いますが、ディスポーザーや床暖房・ウォークインクローゼットなどの持っていない機能を見ると「自分の家にもほしい」という意見が出る可能性があります。
このように、顧客ニーズには顕在化しているものもあれば、潜在的なニーズもあります。そして、一般的には潜在ニーズのほうが圧倒的に多いとされているので、顧客を最大化するためにはこの潜在ニーズが何かを見極めることが重要です。顧客価値の他にも注目すべき指標
最後に、顧客価値と合わせて見ておくべき指標を解説します。
リテンション率
1つがリテンション率です。これは定着率・継続率とも訳される単語で、製品・サービスを利用した顧客が一定期間内に再度利用する割合を表します。当然高いほうが製品・サービスとしては優秀で、顧客価値を提供しているからこそリピーターやファンが生まれて何度も製品・サービスを活用してくれるのです。
リテンション率については、「リテンション率(顧客定着率)とは、メリットや計算方法を解説」の記事でも紹介しております。顧客ロイヤリティ
顧客ロイヤリティは、顧客の製品・サービスに対する好意度を表します。信頼・愛着とも呼ばれており、顧客ロイヤリティを作っていくことがリピーターやファン化にもつながります。
まとめ
顧客価値はマーケティングの4Cの1つで、ビジネスとして成長する上で必要不可欠な要素です。顧客価値を提供して高めていくためには、顧客視点で製品・サービスを捉える必要があります。
自分達の顧客がどういう人で、何に悩み何に喜ぶのかの解像度をしっかり高めた上で、顧客価値を提供していきましょう。
しかし、マーケティングに役立つ指標は顧客価値だけではありません。さらに詳しく知りたい方は、下記の資料も参考にしてみてください。関連記事
監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。